湖畔に佇むオーガニックカフェ<なぎさWARMS>さんインタビュー

POSTED ON 2017.04.28

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なぎさWARMS

滋賀県を中心に関西全域で家づくりや店づくりに携わってきた株式会社プラネットリビングが、2009年4月にオープンしたオーガニックカフェとギャラリーを併設したコンセプトショップ<なぎさWARMS>
湖畔に佇む大津・なぎさ公園内という最高の場所で、オープンから働く店長兼シェフの松下博文さん(以下松下)に、これまで食と関わってきた経験から食に対する自身の思いを伺ってきました。

ゴチソウでは、ただ単にお店にフォーカスを当てるのではなく、そこで働く「人」がどんな思いでどんな取り組みをしているのかなど、一般的には見えないし見えづらい部分に焦点を当ててお伝えしたいという思いがあります。お財布事情はもちろんありますが、個人的には少々高くても「人にお金を払う」という消費の仕方を選択しています。美容室を例にとると分かりやすいかもしれません。他店よりは少し高いけれど、私の髪のことを熟知してくれている●●さんにカットして欲しい!と時間もお金もかけて通われる人は少なくないのではないかと思います。私にとっては日常的に買う食材や外食も一緒です。美味しいことはもちろんだけれど、そこに乗っかる「人の想い」を知ると消費の安心感や満足感が格段に変わってきます。そんな目線でお店選びしてみるとまた世界が変わるかもしれません。私はもっと「人」の想いが知りたい。いろんな人の元に足を運んでお話しを聞かせていただきたいと思っています。

どうぞ!

なぎさWARMS

GOCHISOU編集長島崎(以下島崎):松下さんが食に関わるきっかけはなんだったのでしょうか。
松下:大学時代に飲食店でアルバイトを始めたことがきっかけでした。卒業後、そのままその飲食店に就職し、29歳で独立して滋賀県南草津にお店を構えました。いろんな方に教えていただいたり支えていただきながら料理を覚えてきました。
島崎:南草津ではどういったお店をされていたんですか。
松下:オーガニックカフェ・バーです。独立するにあたり、お店で提供する素材を自分で吟味してみたいと思っていました。当時働いていた飲食店は、安くて美味しければ良し。例えばドレッシングであれば、市販の「どの」ドレッシングがおいしいのか?という世界でした。働きながら食について学ぶうち、野菜にはどんな農薬がかかっているのか?農薬は環境にどのような影響を及ぼすのか?を知りました。それもあり、自分は有機野菜など安全な食べ物を提供するお店にしようと。諸事情で既にお店はたたんだのですが、その後もずっと飲食業界に身をおいてきました。
島崎:その流れで、<なぎさWARMS>に入社されたんですね。
松下:そうですね。知人の紹介で今の会社の社長と出会いました。もとは、エコロジー&デザインをコンセプトに自然派の住宅建築を目指す設計事務所なのですが、その考え方から飲食をやるなら自然な食を提供したいという思いがあり。ご縁があってやってみないかとお声がけいただき、今に至ります。

オープン当初は、「野菜しかないの?」という声ばかりでした

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島崎:<なぎさWARMS>がスタートしたのは8年前でしたよね。その頃は、まだオーガニックや無農薬・無添加というのは、まだまだ馴染みがなかったように思いますが、オーガニックカフェ・ビーガンカフェというスタイルはお客様にどう受け止められていたのでしょうか。
松下:我々は野菜の本来の味を楽しんで欲しい!と自信を持っていましたが、現実は「野菜だけならいいわー」といって、食べずに帰る人が多かったですね。隣の店舗さんがハンバーグなどを提供されているので、よくお客様は流れていきましたね。でもそれが本当のお客様の希望だとしたらそれに答えるのも必要かと思い、比較的安全な肉を仕入れながらお肉のメニューも取り入れてきました。今は、安全に育てられた鶏肉、卵、牛乳を使った料理もご用意しており、お肉料理などを好まれるお客様にも喜んでもらえるようになったかなと。
島崎:やはりそうだったんですね。
松下:あとは、オーガニックは高い!という先入観は、今もあると思いますね。野菜だけでこの値段は高い!と、味ではなく値段だけで判断されることもあり、悔しい思いをすることは何度もありました。徐々にオーガニックやビーガンという言葉も認知されてきて、今は「そういうお店を探していた」ということでご来店されるお客様も増えて嬉しいです。

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島崎:実は数年前に、フード・インクというドキュメンタリー映画を観て、私たちが普段食べている牛や豚、鳥や魚がどう育てられてきたか、何を食べてきたのか?を知りました。それは衝撃的な内容で、現実を知ってからはしばらく肉が食べられなくなりました。それ以降は、自然栽培や無農薬野菜を中心に、飼料にこだわったり大切に飼育されている動物や卵、乳製品を選んでありがたく少量いただく食卓に変わりましたが、松下さんもそういったような思いで動物性食品を選ばれているのですか。
松下:そうですね。正直、牛・豚・鶏などは病気にならないように、薬がたくさん使われていますし、何を食べて育ったかなんて消費者には分かりません。個人的には山を駆け回ってきただけの、鹿やイノシシを食べる方がよっぽど安全だと思いますね。お店では、動物性の食材は厳しい目で吟味して使っているつもりです。実は、少し前に狩猟の免許を取ったんです。ジビエの解体ができるので。
島崎:いいですね。安全なジビエがもっと身近に食べられたら嬉しいですよね。<なぎさWARMS>でもいただける日が来るのを楽しみにしていますね。ちなみに松下さんはお子さんがいらっしゃるとお聞きしたのですが、お子さんがいる立場として、子どもたちの食に関して思うことはありますか?
松下:まずお母さんが、子どもに与えているものが何なのか、どういう影響があるのかを理解する必要があると思っています。例えば、スーパーやコンビニで売っているカット野菜。塩素で洗ってあり、殺菌・漂白され栄養がなくなっているのが現実です。便利さを求めてきたのは我々なんですけど、その代償は大きいと思います。あとは、無添加という言葉に騙されないこと。書かなくてもいい添加物もあるので、実は無添加ではないものの方が多いんですね。子育てしながら、食のことにも気をつかわなければいけない大変さはよく分かります。私も、家に帰ったらお湯を入れて3分でご飯ができたら楽だなぁと思いますけど。家庭の中でうまくバランスをとりながら、食育にも目を向けていただけたらなと思います。

オーガニックや無添加の食材を買える場を作りたい

なぎさWARMS

島崎:今後、何かやってみたいと思っていることはありますか。
松下:やりたいことはいろいろありますが、日常的にオーガニックの食品が買えるスーパーはやってみたいですね。あとは農家さんと消費者の方が繫がれるようなイベントやマルシェも。ちなみに、あまり知られていないんですが、<なぎさWARMS>では野菜の販売もしているんですよ。
島崎:お野菜買えるんですか。知りませんでした!
松下:公に大々的に販売しているわけではないので、今は都度量り売りでご提供させてもらっています。お店にいらしたお客様が、野菜買えるの?と聞いてくださる場合もありますし、既に知っているお客様は野菜だけ買って帰るというのもあります。
島崎:そうだったんですね!オーガニックのお野菜を買える場所が増えて嬉しいです。そしてぜひスーパーも。オーガニックの食品を買うことがイベントごとではなくて、日常的になるきっかけになったらいいですね。最後に、松下さんが滋賀でオススメする農家さんや飲食店があれば教えてください。
松下:本当にたくさんの人の力をかりて<なぎさWARMS>を運営していますので、決めるのは難しいのですが。そうですね、農家さんですと「くろだ農園」さん。守山・野洲で真面目に丁寧に農業と向き合っておられます。今は、トマトの栽培に力を入れていらっしゃいます。それから、栗東の走井(はしり)という里山の限界集落で活動している山田くん。秋には、秋の収穫を食と音で祝う「Harbes-Ta HASHIRI」という宴を主催していました。飲食店ですと、守山の「梅の木」さん。早くからマクロビ料理を提供されている大先輩。一品一品、ものすごく丁寧に作られているにもかかわらず、価格も良心的です。食材を買うなら大津の「けんこう舎」さん。<なぎさWARMS>の開店時からお付き合いさせていただいており、なくてはならない存在です。洋菓子なら、「パティスリー ユーピユーピ」さん。ご夫婦で大津市の萱野浦でケーキ屋&カフェをしておられます。添加物をなるべく使わず、有機素材を取り入れながら作られていますし、奥様はRAWスイーツやマクロビケーキも作られています。本当はもっとご紹介したいのですが。
島崎:貴重な情報をありがとうございます。私も調べてみます!誰から何を買うのか、誰が作ったものを食べるのか、日々考えさせられる問題です。今日をきっかけに、私も食を通した“消費”について、もう一度立ち止まって考えてみようと思います。<なぎさWARMS>さんの今後の展開も楽しみにしていますね。今日はどうもありがとうございました。

写真_島崎慎也 / 取材・文_島崎ともよ

松下 博文 なぎさWARMS店長兼シェフ
滋賀県大津市生まれ。2009年、なぎさWARMSを運営する株式会社プラネットリビングに入社。店舗オープン時から、オーガニックやビーガン料理のメニュー開発から調理までを一手に担う。仕入れには特に厳しい目を持ち、厳選した素材のみを使う徹底ぶり。

なぎさWARMS
住所:〒520-0806 滋賀県大津市打出浜15-5
電話番号:077-526-8220
営業時間:11:00~22:00
定休日:不定休

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