薬膳の基本の「き」を学びましょう

では、森先生。まずは「薬膳の基本」について教えてください。そもそも、薬膳とは一体何を意味している言葉なのでしょうか。

森:薬膳とは中医学の考え方をベースに健康維持や病気の予防、改善のために作られる食事のこと。食べる人の体質や体調に合わせて作るため、基本はオーダーメイドです。素材の栄養素やカロリーという観点ではなく、素材の五味や五性、作用方向(温める、冷ます、引き締めるなど)という素材そのものの特性を見ていくという特徴もあります。

そして、薬膳を学ぶ上で大切な中医学の考え方の基本となるのが陰陽学説です、この言葉や陰陽図を見たことはありますか?

なんとなく見たことがあるような気もしますが・・・陰陽学説とは何ですか。

陰陽
天、日、春夏、男性、明るい、背中 地、月、秋冬、女性、冷たい、お腹

森:この世の中の物事全ては、陰と陽ふたつの側面で成り立っているという考え方です。陽は、明るい。陰は、暗い。冷たい。男は陽、女は陰というふうに、万物すべてにどちらかの側面があります。陰陽は互いに依存し、そして変化していくものです。冷えやすい時期と暑くなりやすい時期。それは陰陽のバランスが変化しているからですが、どちらが良い悪いということではありません。大事なことはバランスをとることです。

では、バランスをとるために、私たちはどうすればいいのでしょうか。

森:これからの蒸し暑い季節は身体も熱くなります。そんな時は身体の熱を冷ます涼性や寒性の食べ物を食べてバランスを取る。寒い時期はその逆で身体を温める食べ物を食べてバランスを取る。これはどなたでも自然と行っていますよね。例えば、梅雨時期には真冬に食べるような根菜類はあまり食べたいと思わないのではないでしょうか。

確かにそうです。でも、今の現代社会では、なかなか季節や旬を感じることが難しくなっています。

森:そんな方には薬膳は特におすすめです。本来人は自然の一部。季節の流れや自然の法則はそのまま人の身体にもあてはまります。それを表したものが中医学の基本の五行学説です。薬膳は本来人それぞれの心身の状況に合わせて献立を立てるとお話しましたが、まずは季節の特徴、そして今の時期にはどんな食べ物がいいのかという「季節の薬膳」から始めることをおすすめします。意識して始めると身体は確実に変わってきます。

五行図

森先生は、今ご自分で無農薬野菜をつくられているのですよね。

森:はい。だから、どういうものを身体に取り込むのかという部分も大事だと考えています。薬膳からもう一歩踏み込んだ、素材の部分ですね。滋賀県では良い野菜がたくさんつくられています。みなさんの地元の近くのいい野菜を食べてもらえれば、というのはつくり手としての願いです。

薬膳の力で梅雨を乗り切る方法とは?

薬膳の力で梅雨を乗り切る方法とは?

森:まずは身体の中の余分な湿気を取り除く食材を選んでいきます。梅雨の時期は先ほど説明した五行の「土」にあたる季節。土は雨の恵みにより肥えて作物を大きく成長させます。同じように身体も養う時期ですがどうしても余分な湿が溜まりがち。湿は水のように上から下に落ちる性質と粘滞性があり、特に下半身に不調が起きやすくなります。むくみやおりものが増えたり、アトピーなどの皮膚病が長引いたりする季節でもありますね。

この時期ならではの、感情の変化や気をつけたいポイントを教えてください。

森:五行での「土」の季節の感情は「思」です。雨が降り続くと、どうしてもうつうつとした気分になりがち。心と身体は互いに影響し合うので、思い煩うことで更に身体の調子も悪くなります。あえて明るく考えるように意識しましょう。土壌を養うという意味では、これから動きだすための勉強期間と考えるのも良いですね。

季節の味は「甘」。砂糖の甘さではなくとうもろこしや穀物などの自然な甘さを摂ることで、「脾」もすこしリラックスしますよ。ただし、摂りすぎると今度は湿が溜まり胃もたれしてしまいますから、ここでもバランスが大切です。

身体の不調別・オススメの食材

さくらぼ

●湿を取り除く
ネギ、生姜、ミョウガ、シソ、三つ葉
温性で辛味があるものは湿を発汗させて排泄させる。気血の流れもスムーズに。

ジャスミン茶、紅茶、さくらんぼ、みかんなど
温性で香りのあるものにより湿を取り除く。

キュウリ、セロリ、緑豆(緑豆もやしでも)、豆腐、お茶など
熱をとり、湿を排泄する。涼性の性質なので冷えのある人は量を加減。

トウモロコシ、冬瓜、大豆、小豆、黒豆、はと麦など
利尿作用により湿を取り除く。むくみの解消に。

●脾胃を養う
米、かぼちゃ、いんげん、長芋、じゃがいも、干し椎茸、キャベツ、鶏肉、牛肉など
自然な甘みのある食材で脾胃の働きを強くする。

最後に

森:私がおすすめしているのは、旬の野菜や食材を取り入れて身体を整える薬膳。普段食べるもので食薬となるものは沢山あります。使い慣れたいつもの食材を日々の体調の変化に合わせて選び献立を立てていく。これが、長い時間で見た時に身体に負担が少なく、一番効果があると思います。

次回は夏の食養生について教えていただきます。